「もので釣る」は教育的にアリなのか
今回は勉強から少し枠を広げて、子どもたちに様々なことをさせたいときに「物で釣る」ことは良いことなのかということについて書きます。
例えば…
・学校の宿題が終われば、ゲームしてもよい。
・テストで90点以上とったら、欲しい物を買ってあげる。
・部屋をきれいに片付けたら行きたいところに連れて行ってあげる。
など、なかなか子どもが気の進まないことに対し、子どもたちの望むものを報酬として挙げることで、半ば強制的に子どもたちのやる気を出させるという方法ですね。
この方法、結論から言うとアリです。
1.社会人になっても続く対価報酬
社会に出れば、私たちは働いたその成果として報酬をもらいます。逆に報酬がもらえなかったら、または、出した成果に対し適当な報酬がもらえなかったら、モチベーションは上がりません。子どもたちも同じです。勉強や片付けの成果に対し“ご褒美”を設けるのは、よい方法です。ただ、これは必ずご褒美をあげろと言っているわけではありません。そうすると、「ご褒美なしで頑張ることをしなくなる」という意見が出てきそうです。それは、その都度その都度、ご褒美の形は説明しないといけません。
例えば、テストでよい点をとることによる報酬は「学力が上がる」「勉強の習慣がつく」「通知表でよい評価がされる」「志望校に合格する」などです。
目の前の欲求を満たす“物”だけではなく、長期的に見たときに自分のためになる報酬の形を少しずつ教えて行く必要があるでしょう。
2.子どもたちは親から褒められるために頑張る。
「褒めて伸びるタイプ」という言葉がありますが、タイプというより基本的に子どもたちは全員これに当てはまります。物質的な物を与えなくても、大袈裟というくらい褒めてあげれば、次のやる気につながります。「親の喜ぶ顔が見たい」というは、子どもたちの先天的な意識です。さらに、「褒められる」ということが加われば「また、次も頑張ろう」と思えるのは当然です。実際に中学受験を指導していて、もちろん自分の進路のために勉強するのですが、中にはどこか「親のため」に頑張っている子も少なくありません。子どもたちにとって「褒められる」ことも立派な“ご褒美”です。
3.親にとっても躾がしやすい。
これが、親御さんにとっては一番の本音かもしれません。笑 ただ単に、「勉強をしろ」と言うだけでは、子どもたちはすぐには動きませんよね。ご褒美を掲げることで子どもたちはすぐに、ご褒美獲得へ向け動き出します。ご褒美ありきで最初は動いていても、それが習慣になると自然とできるようになります。
★ご褒美獲得への条件の出し方
これは、中室牧子さん著の「学力の経済学」でも触れられており、まさにその通りだと思いました。ご紹介します。
A「テストで90点以上とったらご褒美」
B「テストの日まで毎日に英単語を20個ずつ書いて覚える」
どちらの条件の方が、子どもたちのテスト結果が出ると思いますか?
正解は、Bです。これは、インプットとアウトプットの違いです。Aはテスト結果についての条件なのでアウトプットになります。一方のBはテストでよい点をとるためにする具体的なインプットの作業になります。アウトプットの条件を出されて子どもたちは、やる気はでますがいったい何をしてよいかわからず、結果が思うように出ないことが多いです。ですよで、「結果はあとからついてくるもの」として、結果を出すまでのインプットの作業を条件にすることで、よい結果に導いてあげるということです。実際に「学力の経済学」には、インプットを条件にしてご褒美を提示した方が子どもたちの点数が出るという研究結果が出ていることが述べられています。つまり、結果ではなく過程を条件にしてあげるということですね。「結果はあとからついてくる」ということを念頭に置いてすれば自ずと「条件クリア」→「ご褒美」=「結果」という図式が出来上がり、後々の子どもへの意義付けもしやすくなります。
まとめ
「物で釣る」のはよいことである。
1.社会人になっても続く対価報酬
2.子どもたちは親から褒められるために頑張る
3.親にとっても躾がしやすい
★ご褒美獲得のための条件を出すポイント
アウトプットではなく、インプットの内容を意識する。